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No.8 Pot-au feu


[8〜10分]
牛塊肉1.5kg
*どの部位を使うかについては下記参照
人参300gr
カブ200gr
ポロネギ2本
玉葱2個
丁字2本
セロリ小1本(茎のみ)
にんにく皮付きのまま横半分に切って1/2個
水2.5lt (又は仔牛または牛の骨からとったブイヨン)
粗塩15gr
骨髄入りの骨人数分

この写真で見えている肉は 骨付きPlat-de côte. トップページの皿盛りに写っているのは Paleron です。
フランス家庭料理といえば、誰もがまっ先に思い浮かべるのがポトフでしょう。3時間かけてゆっくり煮込んだ牛肉は Boulli (ブイイ)と呼ばれますが、なんとも家庭的で長閑なひびきです。一方、肉を煮込んだ後に残るおいしいスープは Bouillon (ブイヨン)。
ブイイには鍋の中で一緒に茹でた野菜を添えて、ごくシンプルにマスタードと粗塩にコルニション(ピクルス)などで食し、熱々のブイヨンにはかりっと焼いたバゲットのトーストをふやかしていただくのです。

さてここで問題となるのが、牛肉のどの部位を使うのかということ。「ウシ」とひと言でいっても、考えてもみてください、あの巨体です。堅いけれど味わい深いところ、柔らかいけれど味のないところ、脂がのっているところ、ゼラチン質が豊富なところ、といろいろです。十分煮込んでも乾燥せずに柔らかくなる部位は満足ゆくブイイにはなりますが、さてブイヨンの味わいは今ひとつ。一方、ブイヨンをしみじみと味わい深いものにしてくれる部位を使うと、ブイイには旨味や柔らかさがあまり残っていないものなのです。それに、美味しいブイイのためには十分熟成した肉を。美味しいブイヨンのためにはフレッシュな肉がふさわしいのですから、たかがポトフといっても、けっこう悩ましく、軽く考えたら3時間も待ちこがれたのに食卓でガッカリ、ということになりかねません。

そこでお奨めするもっとも美味しい部位はplat de côte (プラ・ド・コート/骨付き前部バラ肉)。次の候補はaiguillette(エギュイエット/日本ではエチボとよばれる臀部肉の先端部位で、やや乾いた感じに煮上がる)あるいは paleron(パルロン/肩肉で、かなり柔らかくなるが味わいがやや薄い)など。それらにゼラチン質豊富で、ブイヨンに味わいとつややかさを与えてくれるgite (ジット/上股肉)とを混ぜて煮込むのもよいでしょう。大きなマルミット(鍋)さえあれば、ポトフは一度にたくさん作る方が合理的です。残ったブイイやブイヨンを使って、アシェ・パルマンチエ、ブッフ・ミロトン、オニオングラチネといった家庭料理があれもこれもと作れるのですから。

ところで、ブイヨンを味わう際に重要なのは、細身のバゲットで作るトーストです。ある古い料理書を読んでいたら「皮がよく焼けたフルート(バゲットのこと)を縦半分に切り、中の白い身は指で取り除き、それをごく薄く斜めにスライスしてバターをぬり、オーブンでしっかり焼き色がつくまで焼く」と書いてありました。なるほど、白い身は取り除くのかと納得です。カリカリと香ばしい焼きたてのトーストを、保温しておいたスープ皿に数枚入れ、そこに熱々の野菜くず入りブイヨンを注ぐのであって、けっしてブイヨンが先ではないというのが私のこだわりです。お試しください!


骨髄入り骨は冷水につけて一晩冷蔵庫で血抜きする。



肉は紐で縛り、室温にしばらく出して温度を上げておく。人参は皮をむき、玉葱は皮をむいて丁字を刺し、カブは皮をむき、セロリは葉を落として半分に折り、ポロネギは葉先に入っている土を洗い流したら半分に折って紐で縛っておく。

※写真:肉は奥がPlat de côte(胸バラ肉)、手前がaiguillette(エチボの先端の部分)です。奥がos à moelle (骨髄入り牛骨)

マルミットに肉を入れて水を入れ、塩を加え、蓋をせずに弱火にかける。ゆっくり沸騰点にもってゆき、上がってきたアクを丁寧にすくう。表面に浮かぶアクがおよそなくなったところで、レードル一杯の冷水を鍋に入れ、そのまま弱火を続ける。次に煮立つ頃には再びアクが上がるので取り除く。同じことをもう一度繰り返し、ブイヨンをできるだけ澄ませる。

※写真:玉葱を直火、あるいはできればオーブンで十分に焼き色をつけてから鍋に加える。ブイヨンの色が茶色くなり、美味しそうな仕上がりになる。あるいは鶏のガラをよく焼いて加えると、ブイヨンの味も色もよくなる。


煮込み時間は、蓋をかけてから3時間。煮上がる20分前に、血抜きを終えた骨髄入り骨を加える。野菜の風味をより味わいたい場合は、煮込みはじめから鍋に入れずに時間差をつけたほうがよい。ただし焦がした玉葱は最初から鍋に入れること。

肉が煮上がったら紐を取り除き、厚めにスライスし、野菜と共に皿に盛りつけ、マスタードや塩の華を添え、平葉のパセリの粗みじん切りを散らしていただく。骨髄には骨の上部に塩の華を散らし、モカスプーンで骨髄を取り出して食べる。
ブイヨンは上に記したように、香ばしくトーストしたバゲットと共にいただく。


※写真:骨髄


メモ
とれたブイヨンは、まず鍋に残った野菜とクルトンとで味わい、さらに残ったブイヨンは冷凍保存しておき、オニオングラタンスープを作るときに利用する。
またブイヨンを煮詰めると、肉のゼラチン質で煮こごり状に固まる。それをいただく場合はさらし布でブイヨンを漉し、冷蔵庫で一晩冷やし、翌日、表面に固まっている白い牛脂を取り除き、固まったブイヨンをスプーンでガラスの容器に移し、サービスする。